「20歳になったら国民年金に加入してください」という通知が届いて驚いたことはありませんか?
一人暮らしを始めたばかりの学生やフリーターにとって、年金制度は難解でとっつきにくい存在ですが、実は将来の安心に直結する大切な制度です。
この記事では、国民年金の基本から加入方法、支払い方法、払えないときの対処法までを一人暮らし初心者向けにわかりやすく解説します。
1. 国民年金とは?日本の年金制度は3階建て

日本の公的年金制度は、以下のような「3階建て」の構造になっています:
1階:国民年金(基礎年金)…全国民共通、20歳以上60歳未満が対象
2階:厚生年金保険…会社員や公務員が対象。給与比例で支給額が増える
3階:私的年金(企業年金、iDeCoなど)…任意加入制の老後資金形成策
本記事で扱うのは、1階部分の「国民年金」です。
特に一人暮らしで社会保険に加入していない人(自営業・学生・フリーターなど)は、この基礎年金への加入・管理が必須になります。
原則として全員が加入しなければいけない部分で、加入していると老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金などが支給されます。
自身が高齢になったときだけでなく、障害を負った場合や家族を亡くした場合にも支給を受けられる年金です。
2. 国民年金に加入が必要な人とは?

原則として、20歳以上60歳未満のすべての日本国民が対象です。
会社員や公務員など、厚生年金に加入している人は自動的に国民年金にも加入することになります。
一方で、自営業・無職・学生・フリーターなどは自分で国民年金の加入手続きが必要です。
▶ 一人暮らしのケースでは?
- 学生:20歳になると自動的に国民年金の加入対象。保険料の支払いが難しい場合は「学生納付特例制度」が使える
- フリーター:勤務先で厚生年金に入っていない場合、自分で国民年金に加入・支払いが必要
- 無職・求職中:収入がない場合でも原則加入義務あり(免除申請が可能)
3. 加入手続きの流れ

▶ すでに住民票がある場合(通常)
20歳の誕生月頃に「年金加入のお知らせ」が届きます。
自動的に基礎年金番号が発行されて、何もしなくても国民年金への加入が完了します。
通知が届いたら、支払い開始の準備をするだけでOKです。
▶ 住民票を新たに移した人・通知が来ない場合
最寄りの年金事務所、または市区町村の国民年金窓口で手続きする必要があります。
年金加入のお知らせが届いていないだけなのか、住民票の移動なので国民年金に加入できていないのか…
いずれにしても、現在の状況の確認と(未加入であれば)加入手続きを行うために相談しることをおススメします。
4. 国民年金の保険料と支払い方法

▶ 毎月の保険料
国民年金の保険料は収入などに関わらず定額で、令和7年度(2025年度)の国民年金保険料は月額16,980円(予定)となっています。
金額は物価や賃金の変動によって毎年見直されます。
▶ 支払い方法
保険料の支払いについては、下記の方法が可能です。
- 納付書払い(コンビニ・金融機関)
自宅に納付書が届くので、それをコンビニなどに持っていって支払います。
口座を持っていなくても対応できる方法です。
納付書のバーコードを読み取って支払いを完了できるアプリもありますので、活用できればわざわざ支払いにいく手間を省けます。 - 口座振替
毎月自動で引き落としされるため、支払い忘れの心配がありません。
後述する前納・早割制度を受けることが可能です。 - クレジットカード払い
ポイント還元を受けられる、引き落としをまとめられて履歴を管理しやすいなどの特長があります。 - スマホ決済(PayPayなど一部対応)
自治体やシステムによりますが、一部ではスマホ決済による納付も可能です。
▶ 前納・早割制度
- 6か月・1年・2年の前納制度があり、納める期間が長いほど割引額が大きくなります。
- 例えば2年前納を現金・口座振替で行うと、年間で1万円以上の割引になることも。
- 口座振替による「早割」は、通常よりも1か月早く引き落とすことで、1か月あたり50円程度の割引が受けられます。
🔍【補足】 前納を選ぶと一括で大きな金額を支払う必要がありますが、将来の年金の未納リスクを回避でき、かつ割引も受けられるため、安定収入がある方にはおすすめです。口座振替での「早割」は毎月50円程度の割引
5. 支払いが厳しいときの制度

収入が少ない学生やフリーター、無職の方にとって、月1万6000円を超える保険料は大きな負担です。
そんなときに利用できる制度が「学生納付特例制度」や「免除・猶予制度」です。
▶ 学生納付特例制度
- 対象:20歳以上の学生で、前年の所得が一定以下の場合
- 内容:保険料の納付を“猶予”して、将来収入が得られるようになってから最大10年間まで後から支払うことが可能
- 申請方法:毎年、市区町村の窓口または年金事務所で申請が必要。学生証や所得証明書の提示が求められる
- ポイント:未納扱いにならないため、将来の受給資格期間にはカウントされる
🔍 注意点:追納しない場合、その分は将来の年金受給額に反映されず少なくなります
▶ 保険料免除・納付猶予制度
- 対象:失業中、収入が少ない、生活保護受給中などで経済的に困難な人
- 種類:
- 全額免除
- 4分の3免除
- 半額免除
- 4分の1免除
- 納付猶予(50歳未満の本人と配偶者の所得が一定以下の場合)
- 申請方法:年金事務所または役所での申請が必要(前年の所得や失業証明が必要)
- 効果:将来の年金額は減少するが、未納にはならず、障害年金や遺族年金の権利は維持される
- 追納可能:免除・猶予された期間の保険料は、最大10年間遡って追納可能(一定の加算あり)
🔍 補足:申請せずに未納になると、将来的な受給資格にも影響します。
申請すれば制度の保護を受けられます。審査はありますが、承認されれば未納とはならず将来の年金受給に反映されます。
6. 払わないとどうなる?

「お金がないから」「よく分からないから」と保険料の納付を放置してしまうと、さまざまなリスクがあります。
▶ 年金の受給資格を失う可能性
- 年金を将来受け取るためには、原則10年以上の保険料納付期間が必要です。
- 未納期間が多いと受給資格自体が得られない可能性も。
▶ 障害年金・遺族年金の対象外になる
- 保険料を納めていない期間に病気や事故で障害を負っても、「障害年金」を受け取れないケースがあります。
- 万一のときに遺族が「遺族年金」を受け取るためにも、納付状況は重要です。
▶ 滞納が続くと強制徴収の可能性も
- 一定期間の未納が続くと、最終的に財産の差し押さえが行われることもあります。
- 督促状 → 催告書 → 差押予告書 という流れで正式な徴収が進行。
🔍 ポイント:払えない場合は「未納」ではなく「免除・猶予」を申請することで、制度上の保護が受けられます。
7. よくあるQ&A

Q. 収入がないのに払う必要ある?
→ 原則加入義務があります。免除制度を活用しましょう。
Q. 学生納付特例ってあとから絶対払わなきゃダメ?
→ 強制ではありませんが、払っておくと将来の年金額が増えます。
Q. 実家の親が代わりに払うのはOK?
→ 問題ありません。家族が支払うことも可能です。
Q. 一人暮らし先での手続きは必要?
→ 住民票がある場所での手続きが原則です。引っ越しの際は注意を。
まとめ
- 国民年金は、20歳以上のすべての人が関係する制度です。
- 一人暮らしでも「知らなかった」では済まない、重要な社会保険
- 加入手続き・支払い方法・免除制度をしっかり把握して、将来の備えを始めましょう
- 不明点は年金事務所・役所での相談が安心です