「この手続きには所得証明書を持ってきてください」「課税証明書の提出が必要です」——こうした場面に直面し、「そもそもそれって何?」と戸惑ったことはありませんか?
とくに一人暮らしを始めたばかりの人にとって、こうした役所関連の書類は初めて聞く言葉も多く、戸惑いがちです。
この記事では、所得証明書と課税証明書の違いや、よく使われる場面、実際の取得方法や注意点について、わかりやすく解説していきます。
第1章:所得証明書と課税証明書とは?
● 所得証明書とは?
「所得証明書」は、前の年の収入額や、所得控除後の課税所得額などを証明する書類です。
市区町村が、住民税の課税資料に基づいて発行します。
記載される主な項目:
- 総所得金額
- 所得控除額(社会保険料、扶養控除など)
- 課税所得額
- 所得金額に応じた住民税額(含む場合)
● 課税証明書とは?
「課税証明書」は、前年の所得をもとに、実際にいくら住民税が課税されているかを証明する書類です。
内容的には所得証明書と重なる部分が多いですが、自治体によっては「課税額に重点を置いた証明書」として運用されていることもあります。
● 実際は一体化しているケースも
多くの自治体では、「所得証明書・課税証明書(課税・所得証明書)」という名称で1枚にまとめて発行されています。
そのため、提出先が「どちらを求めているのか」をしっかり確認する必要があります。
第2章:どう違う?よくある用途別の使い分け

● 所得証明書が使われる主なシーン
- 奨学金の申請
- 保育園や幼稚園の保育料決定
- 大学や専門学校の学費免除申請
- 婚姻・離婚に伴う児童扶養手当申請
● 課税証明書が使われる主なシーン
- 住民税の減免申請
- 引っ越し時の行政手続き
- 自治体の補助金申請
- 一部の就職時提出書類
- 公営住宅の入居申請
提出先によっては、どちらを提出すべきか明示されていない場合もあります。
その場合は、「課税・所得証明書」として一体になったものを選ぶのが無難です。
第3章:取得できる場所と方法

所得証明書・課税証明書は、住民票のある自治体の役所でのみ取得できます。引っ越し前の情報が必要な場合は、旧住所地で手続きが必要です。
● 取得方法
- 窓口で申請
- 市役所・区役所・出張所など
- 本人確認書類が必要(マイナンバーカード、免許証など)
- 郵送で申請
- 申請書、本人確認書類のコピー、返信用封筒、手数料分の定額小為替などを送付
- コンビニ交付(対応自治体のみ)
- マイナンバーカード+暗証番号が必要
- 早朝や休日でも取得可能で便利
● 手数料
- 自治体により異なりますが、1通300円前後が一般的です。
第4章:取得時の注意点

● 発行時期に注意
所得・課税証明書は、通常6月以降にその年分の最新情報が発行されます。
これは、税務署から自治体へ情報が届くのに時間がかかるためです。
そのため、春先に「最新の証明書を提出してください」と言われても、前年分のものしか取得できないケースがあります。
● 年度の指定方法に注意
- 「令和○年度の証明書」=前年の所得
- 「○年分の収入が知りたい」など、西暦と年度の混同に注意
● 所得がない場合も証明書が必要?
- 所得がゼロでも、「非課税証明書」として取得可能です。
- 生活保護の申請や奨学金申請などで「収入がないこと」の証明として使用されます。
● マイナンバー記載の有無
- 一部の自治体では、申請時に「マイナンバーを記載するかどうか」を選択できます。
- 提出先によっては、マイナンバー記載の証明書が不可とされる場合があるため注意が必要です。
- 不明な場合は、マイナンバーなしで発行しておくと安全です。
第5章:一人暮らしで気をつけたいポイント

● 親の扶養に入っている場合
- 所得証明書には扶養関係が反映される場合があり、本人の所得はゼロでも親の扶養控除として表示されることがあります。
- 提出先によっては、世帯全体の証明書が必要とされる場合もあるため、確認が必要です。
● 所得がなくても提出を求められるケース
- 公営住宅や奨学金、減免申請などでは、「所得がない」ことそのものの証明が必要になります。
- 証明書が出ない=不要、ではなく、非課税証明書を取得する必要がある点に注意しましょう。
● 引っ越し直後の取得は要注意
- 今年の証明書は「前年1月1日に住民票があった自治体」でしか発行できません。
- そのため、引っ越し後すぐは旧住所の役所に申請しなければならないこともあります。
まとめ
所得証明書と課税証明書は、一見似ているようで、提出先の目的に応じて使い分けが必要な重要書類です。
とくに一人暮らしをしていると、行政手続きや補助申請、奨学金、就職など、さまざまなシーンで提出を求められることがあります。
取得自体は難しくありませんが、内容や発行時期、申請方法、マイナンバー記載の有無など、事前に知っておかないと困るポイントも多いのが実情です。
「どちらを提出すればいいのかわからない」と思ったら、自治体の窓口や提出先に確認し、「課税・所得証明書」として発行してもらえばほぼ対応可能です。手続きに迷わないように、この記事をぜひお役立てください。